都市構造からみた住宅立地論

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トゥアンの研究のアプローチや成果は,詳細な文献の解釈や考察に基づくが,残念ながら方法論的議論が無く,多くの批判にあるように分析そのものが無い。
しかしながら,レルフ(1991)による「没場所性」に関する議論から郊外住宅地の景観に潜む場所の均質性や画一性の創造と消費主体を考察したり,あるいは,ベルク(1993)による郊外住宅地の解釈にあるように,都市景観に表現される事象に対する文化的意味の違いを考慮することは,イギリスを除くヨーロッパにおける郊外のマイナスのイメージと,理想の生活の枠組みを示すアメリカの近郊地帯のプラスのイメージの違いを考える上で意義深いものである。
なぜなら,町に住むことをひとつの特権と見なす傾向の強いヨーロッパと,都市を否定的に考え,自然を肯定的に考えるアメリカにおける郊外開発を比較するには,従来の地代を中心とした経済的なアプローチだけでは不十分である。郊外開発に絡んだ景観の意味も合わせて解釈することによって,歴史的,主体的かつ魅力的にハウジング研究ができるものと思われる。
ハウジング研究に関連して,わが国の地理学的研究では人文主義的アプローチをとった研究例としてわずかに杉浦(1992)などがあげられる。これらは決してハウジング研究を目的としたものではないが,そこにおいて展開される議論や解読は居住に関する地理学的考察そのものである。
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前田(1982)により文学作品に描写された都市空間の解読が注目をされた後,杉浦は,プロレタリア文学作家の徳永直(1929)による『太陽のない街』から20世紀前半(大正期から昭和初期)にかけての東京における中小工場地域で展開された工場労働者の労働運動と居住状況を中心としてみた生活の解読を行った。
また,杉浦は川本三郎(1990)による『モダン都市文学Ⅶ犯罪都市』のなかで指摘された都市犯罪と探偵小説の関係から,不良住宅地区やスラムを都市構造に関連させ,さらには,東京郊外における鉄道会社などによる住宅開発などにも言及しながら,数多くの文学作品から都市構造からみた住宅立地論を解読している。
これらで解釈された点は非常に興味深いものであり,ハウジングに対するハード面だけではなく,作家の捉えた住宅地域イメージや居住者の生活感及び人物像などのソフト面への着目は今後のハウジング研究の新たな展開ともいえる。