人文主義的アプローチ

EA008_L
1950年代末に起こった地理学の科学化をめざした計量革命以降の,新たな方法論のひとつとして,人文主義(人間主義)的アプローチがある。このアプローチに関しては,山野(1979)などにより詳細に解説されているように,主体から主観を通してみた空間の意味や価値についてとらえようとするもので,方法論的に洞察や記述が重要視され,計量的分析を重要視しない傾向がみられる。
人文主義的アプローチによるハウジング研究としては,トゥアン(1992)による郊外とニュータウンに関する記述が注目される。そのなかでトゥアンは,産業革命期以前の都市と郊外に対する人々の抱く感情が都市の中心部の居住環境の悪化に従って逆転したことによって,「貧しい人々の不健康さと不潔さへの恐怖」のために,富裕層や中産階級が貧しい人々そのものから逃げ出したと解釈した。
トゥアン(1992)は,人々の郊外への移動の理由のなかでも,子どもを育てるためという理由が際だっているとし,都市のアパートの空間が,成長している家族にとっては足りないだけでなく,都市全体が,危険に満ちたものとしてみられているというような情緒的なものを強調している。
間取りは非常に重要です。←こちらのサイトからいろいろな間取りを参考にできます。
さらに,ニューヨークにおける郊外への転居の理由として,「新しい移民たちを避ける」ことを挙げ,自分たちと同じ種類の人々の中で住みたいという人々の要求が,都市から郊外への転居に与える影響を重視している。つまり,郊外や住宅地の質すなわち「排他性・組織化されたコミュニティの生活・限られた会員資格・防護された地区での静かな田園生活など」が住宅の質より強調される。
このような郊外とニュータウンへの人々の志向について,トゥアンは歴史的なアプローチを試み,産業革命を契機とした「都市の荒廃と,健全な生活へのあこがれによって駆り立てられた」現象であると解釈した。つまりトゥアンは,都市からの逃避の一般的原因について「圧倒されるという暖昧な恐怖や,都市生活の混乱と豊かさへの恐怖」であったとし,現在もそうであるとしている。